たまには澤田もエンターテイナー

ノンフィクションライター澤田が、このブログではエンターテイナーになった気でいろいろ振る舞います。

澤田代表の書評『徳川がつくった先進国日本』

さて、澤田代表の書評第1回目は磯田道史の『徳川がつくった先進国日本』。

江戸時代の歴史論評は、30年くらい前までは「農民が武士に虐げられている暗闇の時代」という感じで言われていた。それが杉浦日向子先生や石川英輔先生の登場で、じつは江戸文化は洗練されていて自然環境と調和していたということが紹介された。

けれど、杉浦先生や石川先生の言う「江戸」は、あくまでも19世紀始めからの文化文政期であることに要注意。この時期はそろそろ幕末という段階だ。

磯田先生によると、江戸期の日本は当初からエコロジーで平和な世の中ではなかったらしい。島原の乱までは戦国の空気が残っていて殺伐としていたし、宝永地震の前まではむやみやたらの森林伐採焼畑農業も当たり前に行われていたとのこと。それが災難というきっかけで見直されていき、段階的に「洗練された江戸」に向かっていったという論調だ。

全156ページの薄い文庫本だけど、テーマが一貫しているおかげで読み応えがある。

ビックリしたのは、石川先生も井沢元彦先生もマイナス評価している松平定信を肯定的に観察しているということ。そしてあの田沼意次徳川吉宗を「幕府財政の増収を目的にする点では、吉宗も田沼も同じ」と書いて同列視している。井沢先生の本を読み慣れた人にとっては、かなり衝撃的な記述なんじゃなかろうか。

いやー、やっぱ磯田視点の歴史は面白いわ。