たまには澤田もエンターテイナー

ノンフィクションライター澤田が、このブログではエンターテイナーになった気でいろいろ振る舞います。

キャベツ解熱法の「It Mama」の運営会社には計り知れない大恩がある澤田

忘れもしない、インドネシアつながりで同業者の岡昌之に紹介してもらったのがインクルーシヴの運営する『FUTURUS』だった。

このFUTURUSは今じゃ冷凍睡眠状態だけど、澤田はインクルーシヴのおかげで澤田オフィスという自前の事業所を設けることができた。

『It Mama』のキャベツ解熱法の記事が炎上した件について言えば、内容自体は擁護できないとはいえ少し可哀想なところがある。まず、この記事が2014年に配信されたという点。これはDeNAショックの2年前のことだ。

「火傷には熱湯に浸したタオルをあてがうとすぐに治る」というキュレーションメディアの記事が健康被害をもたらして、そこからDeNAの杜撰な編集体制が明らかになった。このDeNAショック以前と以後じゃ、Webライティングの事情がまったく違う。ここからキュレーションメディアの地位がガッタリと落ちた。

問題は、DeNAショックという大事件が世間一般じゃ殆ど知られていないという点だ。

画像の無断転載問題で一時休業した同じくDeNAの『MERY』は、ショック以後も相変わらずの人気があった。「何でMERYなくなっちゃったの?」という声もあったほどだ。今の今まで散々キュレーションメディアを消費しておいて、DeNAショックという日本ネット業界の分岐点のような出来事について何も知らない。興味すら持たない。

キャベツ解熱法の話にしても、2016年のDeNAショックを念頭に置かないとその本質が見えない。

 

2013年前後はキュレーションメディアの全盛期だった。

複数の書籍や別メディアの記事からそれぞれ一文を抜き取り、予め設定したテーマに沿ってつなぎ合わせる。大衆はGoogleを上手く検索したらいつでも自分の読みたい情報を読めるということを覚えてしまった。

これほど危険なことはない。新約聖書だって、それぞれの福音書の一文をつなぎ合わせたらイエス宮崎勤のような殺人鬼にすることができる。カルト宗教はそうやって誕生する。

政治系キュレーションメディアは、SNSヘイトスピーチを繰り返すネトウヨを何百何千人と作り出した。「韓国がいかにダメな国か」を証明するまとめ記事の材料に、澤田の書いた文章が使われたこともある。

そういう記事がGoogleの検索上位に表示されていたのが2010年代前半という時代だった。

それじゃあ、いつからそういう粗製乱造の記事が検索順位の下のほうに押しやられるようになったのか?

 

It Mamaはキュレーションメディアではなく、キャベツ解熱法の記事もライターの署名付きだ。そういうこともあるから、あの記事はやっぱり削除するべきだ。現にインクルーシヴは記事削除&お詫び掲載という手段を取ったよね。

まとめ記事を書くノリで広義の報道記事を書いていたライターが、あの頃は少なくない数存在していた。澤田もそのひとりだったのかもしれない。何しろ、澤田のライターとしてのファーストキャリアが『Walkersインドネシア』というまとめサイトだったんだから。けれどWalkersに関しては、「まとめサイトという名の報道サイト」という認識で仕事をしていた。だからその記事は澤田が手がける地の文主体のものだ。キュレーションメディアには、その地の文すらない。

おまけに、キュレーションメディアは民間療法と相性が良かった。「頭痛 治し方」と検索してる人は毎日星の数ほどいるからね。その隙間を狙って米を取ってきたライターは、今じゃ大抵は筆を折っているはずだ。

例の記事の筆者も、どうやら執筆活動をやめてるらしいからね。それを考えると、澤田みたいなゴキブリがしぶとく生きながらえてるのが不思議だよ。