たまには澤田もエンターテイナー

ノンフィクションライター澤田が、このブログではエンターテイナーになった気でいろいろ振る舞います。

ガジェットライターはココに気をつける:格安3Dプリンター『Tiko』の失敗

f:id:vascodagama38:20181103211332j:plain

2015年に300万ドル近くの資金をKickstarterで調達した『Tiko』という3Dプリンターがある。

200ドル以下の価格で50~250ミクロンの解像度に対応できるっつーことで話題になったものだけれど、結果から言えば全出資者の4分の1程度に出荷しただけで会社を畳んだ。残りの4分の3は製品を受け取れなかったわけだ。

www.kickstarter.com

ちなみに、実際に出荷された分の製品は案の定ダメダメだったらしい。ロクな造形もできなかったそうだ。

Tikoの開発者は、「プロトタイプから量産型にすることがこんなに難しいとは思ってなかった」と公言している。

欧米では、日本以上にホワイトカラーとブルーカラーの役割がきっちり分けられている。製品の構想をプロトタイプモデルにまでこぎつけるのはホワイトカラーの役割だけど、それをひとつの商品として市場に送り出すのはブルーカラーの仕事。ところが、クラウドファンディングの実行者というのは大抵ホワイトカラーの人間だ。ブルーカラーの苦労というものをナメてかかることがよくある。

 

だからこそ、「その製品が本当に具現化するのか」ということは誰にも分からない。

たまにいるのが、「こんな失敗プロジェクトをこのライターはあの時絶賛していた。責任取れ!」と言い出す同業者。

澤田が今まで書いた記事の中にも、結果的に大失敗した製品はあるはず。けれど、それを根拠に「澤田はトンデモライターだ」だなんて言われても困るんだよ。だって、ライターは予言者じゃないもの。

どうも中途半端なインテリほど、「予想的中率は100%じゃなきゃいけない」と思い込んでいる。そんなこと言ったら、競馬の予想家なんつー仕事は成立しない。

 

これは何度でも書くつもりなんだけど、クラウドファンディングが「ファンディング」である以上は、プロジェクトが大成するか否かは誰にも分からない。

極端な話、「資金調達に成功したプロジェクトのその後」なんつーのは9割9分の出資者にとっては大した意味なんか持たない。予め公言しているリターンさえ配送すればいい。そこまで割り切らんと、クラウドファンディングという仕組み自体が意味のないものになると澤田は考えている。

資金を調達し、それをどう使うかはプロジェクト実行者の裁量だ。そしてそれが見事開花するかどうかは、時の運としか言えない。

クラウドファンディングにプロジェクトを出した時点で、実はロクに事業計画を考えてないという場合もたまにある。或いは、その事業計画が資金調達後に狂っちまう場合もある。Tikoがそうだったように。