「ソニーのiPhone」というカンチガイが生まれる理由
物書きで禄を食んでいる以上、日頃から気を付けていることが多々ある。
ひとつ挙げると、初めて聞く物の名前が普通名詞なのか固有名詞なのかという点だ。
「牛」は普通名詞だけど、「ホルスタイン」は固有名詞。「飛行機」は普通名詞で、「ボーイング787」は固有名詞。「ホッチキス」は日本限定で普通名詞化した固有名詞。「キャタピラ」もそうだね。
この区別ができてないと、さすがにテクノロジー関連の記事なんて書けない。
米ソ冷戦時代の工業製品は、普通名詞と固有名詞の区別なんてする必要はなかった。
トランジスタラジオは、それを扱う人間が誰であれ均等のパフォーマンスを発揮する。クルマもそうだし、テレビもそう。エアコン(昔はクーラーと呼ばれていた)もそう。冷蔵庫も、洗濯機も、掃除機もそう。それを手に取る人間が専業主婦だろうとサラリーマンだろうとケネディ大統領だろうとジャイアント馬場だろうと、製品は同質の性能を発揮する。
ところが、スマホは違う。
持つ人間によって、パフォーマンスの発揮具合が全然違う。徹頭徹尾出荷状態のままで電話しかしない人もいれば、いろんなアプリを取り込んでメッセージアプリやらクラウド保存やら無料グループ通話やらを駆使する人もいる。
これが理解できれば、同じ「スマホ」でもその中身は千差万別だということが分かる。
その理屈がどうしても分からないというのなら、食品に置き換えてみよう。
嫁が旦那に「オタフクソース買ってきて」と頼んだけれど、実際に旦那が買ってきたのがブルドックソースだったらどうするか。この旦那はついに発狂したのかと思われるはずだ。
その上、
「オタフクだろうとブルドックだろうと、同じソースだろ!」
だなんて返されたら、夫婦喧嘩待ったなしじゃねえのかな。
初めて聞く名前が普通名詞なのか固有名詞なのか、まず疑問に思う癖をつける。
これをしないと、のちのち詐欺の被害に遭う可能性もある。
詐欺というのは、細かい部分をオブラートにくるんで何が何でも商品を買わせる行為だ。もちろん、ここに「細かい部分」なんてのは存在しない。けれど、その詐欺商品を押し付けようとする販売員の口から出る名称が普通名詞なのか固有名詞なのかを追求することによって、実は空っぽの中身を明かしてやることもできる。
ジャパンライフのような会社に躊躇なく金を預ける人は、ソフトバンクの販売店で「ソニーのiPhoneちょうだい」と言ってる可能性が高い、と澤田は思う。こう書くとまた怒られるかな?