eスポーツが現代社会に必要不可欠な理由
尾木直樹氏のeスポーツに関する見解が、若干炎上気味だ。
「eスポーツはスポーツなんかじゃない!」という声は、各方面からある。
それじゃあ、何でアジア諸国のスポーツ担当大臣がeスポーツ振興にあれだけ力を入れているのか、という問いについてはどう答えるのだろうか。
マレーシアの現首相は、93歳のマハティール。けれど彼の内閣の青年スポーツ大臣は1992年生まれのサイド・サディクという本物の青年だ。
そのサイド・サディク大臣が、ある日RazerのCEOからTwitterで、
「ブラザー、僕も1000万リンギットほどマレーシアのeスポーツに出資したいんだけど」
と呼びかけられ、
「サンクス、ブラザー」
と返したやり取りは話題になった。
Bro, it's an incredibly progressive budget for Malaysia to commit MYR10M to esports for the youth and millennials. In light of that, I will also be investing MYR10M for esports in Malaysia in 2019. Let's bring esports to the next level together!
— Min-Liang Tan (@minliangtan) November 2, 2018
Thanks bro! This is a huge step in creating a bigger and more sustainable ecosystem for esports in ASEAN. https://t.co/LkXnN329Bd
— Syed Saddiq (@SyedSaddiq) November 2, 2018
「eスポーツはスポーツなんかじゃない!」と主張するなら、国外ではこういうやり取りがあって、何でそういうことが行われているのかということも説明する必要がある。
タイやインドネシアのような山がちな国では、どうしても山間部が経済成長から取り残される。
そりゃそうだ。電気を引くにも作業員が山を越えていかなきゃならないからね。おまけに、大した産業もない場合は誰もそこに興味を示さない。苦労してインフラ整備をしたのに儲けが出ないんだから、山間部の集落はどうして無視される。
そんな集落にとって軍隊、それも陸軍はありがたい存在だ。
陸軍がその集落のある地域を重要拠点と見なして駐屯地を作ってくれば、人口も増えるしインフラ整備もしてくれる。
けれどそれは、陸軍がその土地に興味を示してくれたらの話。そうでなければ状況は変わらない。だから、それを見かねて地方にカネをばら撒く田中角栄のような政治家が時折登場する。タイのタクシン元首相がまさにそのタイプだ。
これがネットインフラだったら、話は余計にこじれる。
通信会社がその土地に電波塔を作るにも、やっぱり採算が見通せなければ作ってくれない。
言い換えれば、電波塔を作るだけの通信量がその集落から発生しなければならないということだ。銀行のATMと一緒だね。
おまけに、集落の住民がネットの重要性を理解しているかも怪しい。「いんたーねっと? そんなものは今まで必要なかった。だからこれからも必要ない」と考えている可能性が高い。
情報格差はそういう理由で発生する。
だから、ネットを導入するためにキラーコンテンツが必要だ。
以上の理由で、オンラインゲームとそれを競技化したeスポーツという分野は地方間格差の是正に必要不可欠な存在となっていく。
その集落で『荒野行動』が流行れば、つまり荒野行動ができるだけの通信速度が確保できれば、他のことにもそれを転用できるはずだ。
インドネシアにハルトノ兄弟という人物がいる。世界100位以内に入る大富豪だ。
その兄の方、マイケル・バンバン・ハルトノは去年のアジア大会で銅メダルを獲得した。種目はブリッジ。この時、マイケルは76歳。
アジア大会の正式種目に制定する際、マイケルがロビー活動をしていた。自分で制定した競技に出場してメダルを獲ったんだから、大した爺さんだ。
ブリッジがスポーツとして見なされてるんだから、オンラインゲームもスポーツとして見なされないと整合性というものに欠けるだろう。
そもそも、eスポーツは障害の有無を問わないバリアフリー競技になり得る可能性が十分あるのに、教育評論家を名乗る人物がそれに否定的なのは思慮に欠けているとしか言えない。