たまには澤田もエンターテイナー

ノンフィクションライター澤田が、このブログではエンターテイナーになった気でいろいろ振る舞います。

2020年の50~60代男は趣味を持たないとマジで危ない

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2020年に50代或いは60代を迎えた男は、かなり気の毒だと思う。

それまでバリバリバリバリ働いてきた。「趣味なんか持つな! とにかく仕事しろ!」と周囲から散々言われ続け、満員電車も長時間残業も厭わずひたすら出勤し続けた。

その末が「コロナ自粛」だ。

それまでとは一転、彼らは会社から「出勤するな。テレワークに移行しろ」と指示された。それまでテレワークなんてしたことがない。それに何日も自宅に居続けると、自分自身に大した趣味がないことに気がつく。

やることがない。とにかくやることがない。暇との戦いは字面で書く以上に辛く、それを乗り切るには何かしらの道楽を持つしかない。

 

テレワークに適合できず、どっぷり浸かれる道楽も持っておらず、その上昨今の「発信した者勝ち」という空気をおぼろげながらでも察してしまっている50~60代男は、いわゆる「自粛警察」になる可能性が高い。

道端を歩いている若者に、何かしらのクレームをつけるオッサン。どの町にもそういうのが必ずひとりはいる。それがマスクをつけてないということでも、自転車で歩道を走っているということでも、何でもいい。些細な違反を過大なものにして自分がそれを断罪する。これは嫉妬と承認欲求に身を焦がしつつ、現代社会特有のレバレッジについていけない初老男がよくやらかす迷惑行為だ。

究極のオナニーと言ってもいい。

一昔前だったら、この不満は「本を書く夢」である程度中和された。アメリカ人が「定年を迎えたらフロリダに家を買って余生を過ごそう」と考えているように、日本人は「定年を迎えたら本を書いて出版しよう」と夢を描くものだったし、実際に己の回想録みたいな本を自費出版する元サラリーマンも多かった。その夢を食い物にしていた新風舎という会社も存在した。

けれど出版業界の不振が誰の目にも明らかなものになった今、その夢すらも描くだけナンセンスだ。

不満はいつまでも解消されない。

 

その不満の行き着く先は、有名人に対する殺害予告や爆破予告だ。

相手は誰だっていい。己の視界に写った著名人は、みんな自分の敵。「鬱憤晴らし」とか「ガス抜き」と言えば簡単かもしれないけれど、実はそんな陳腐な言葉で済ませられるほど単純な問題でもない。

それをやる人間は、必ず大義名分で身を固める。「日本のため」とか「外国人に好き勝手されないため」とか「差別に反対するため」とか「安倍政権を打倒するため」とか、政治的な使命を前面に押し出す。

ここまで来ると、その人は心の中の嫉妬をコントロールできなくなっている可能性が高い。嫉妬は肥大化する代物だ。能動的に気をつけていないと、必ず暴走する。

 

東京では、新型コロナウイルスの患者がまた増加している。

これをどう捉えるかは学者によって分かれるだろうが、少なくとも今このタイミングでは旅行どころかスポーツジムにすら行けない。新しい趣味や楽しみを始めるには、条件がとんでもなく厳しくなっている。

新型コロナは市民間の情報格差を露呈させたけれど、同時に「趣味格差」も露わにしてしまった。