たまには澤田もエンターテイナー

ノンフィクションライター澤田が、このブログではエンターテイナーになった気でいろいろ振る舞います。

【澤田の書評】司馬遼太郎の『風塵抄』が面白過ぎる

10代の頃にも読んでるんだけど、その頃は「爺さんの独り言」にしか思えなかったなぁ。

ところが、三十路になった今読んでみるとすっげぇ面白い。

産経新聞に月一のペースで連載されていた随筆集なんだけど、特に『“独学”のすすめ』は本当に良かった。どうして司馬遼太郎が学校嫌いなのか、を自己解説している。

司馬が中学1年生の時、英語の先生に「ニューヨークってどういう意味ですか?」と質問した。ところがその先生は、「地名に意味なんてあるか!」と怒鳴った。不愉快な気持ちになりながらも学校からの帰り際に図書館へ寄り、ニューヨークの意味を調べてみた。アメリカの宗主国だったイギリスの王室がそう名付けた、ということがすぐに分かったという話だ。

学校の先生が教えてくれなかった知識を、図書館はタダで提供してくれる。司馬が学校嫌いの図書館好きになった理由は、これだそうだ。

で、『受験の世』というタイトルの随筆にはこうある。本当に学問をしたい者こそ大学に行くべきだけど、現実問題そういう人間は決して多くないという。

教養を身につけたいのなら、大学ではなくほうぼうの塾へ通えばいい。何なら図書館に4年か5年通うのもアリ、だそうだ。

「文化系の大学で教養として学ぶようなことは、本を読むことで十分である」

逆に、何かしらのきっかけで10代のうちから良書や大文芸家の著作に巡り会えたとしたら、それは宝くじで何億円当たるより幸運なことじゃないかと澤田は思う。

2018年に三十路を迎えた人にとっても読みやすい文章だし、何よりこれ1冊で見ず知らずの他人とも議論ができる。こんな便利な本、他にないぞ。