たまには澤田もエンターテイナー

ノンフィクションライター澤田が、このブログではエンターテイナーになった気でいろいろ振る舞います。

年末年始はポワロ三昧だった澤田

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年末からAXNミステリーで『名探偵ポワロ』のマラソン放映をやっていた。

というわけで、澤田の年越しは紅白でも格闘技でもガキ使でもなく、ポワロだった。いや、小学生の頃から大好きだったんだよ。NHKで観てたもの。

いつもフォーマルな格好のポワロが、子供の頃の澤田には妙に格好良く感じた。テレビ版のポワロは舞台が1930年代に統一されていて、その頃はアール・デコの全盛期だった。

近代美術史を勉強している若者は、全員ポワロを観るべきだとも考えている。それだけこのドラマは、ヨーロッパに活力があった最後の時代を余すことなく描写している。

その後は第二次世界大戦という地獄を経て、ヨーロッパは東西に分断されて輝きを失っていく。40年代後半から60年代前半にかけて世界で一番輝いていたのは、アメリカのニューヨーク。だから澤田は、この頃のビバップジャズも好きだ。

ヨーロッパとアメリカ、どちらも「戦争が文化の絶頂期を終わらせた」という背景がある。アメリカの場合はベトナム戦争だね。

ポワロを見ていても、ナチスドイツの影がちらちらと見えてくる。たまにポワロの周辺にヒトラーを賛美する人間が出てきて、「イギリスもああいう力強い指導者がいたらいいのに」と口にする。それに対して「ポワロはああいう指導者がいなくてよかったと思います」とはっきり返す。

当然だけど、ポワロは反ナチス。けれど過激なテロを起こしたり、積極的に政治活動をするタイプの人間というわけじゃない。社会的地位を持った紳士の立場を崩さず、物静かな口調で独裁者に対する反感をさりげなく表明する。それが本当に格好良いと思う。

ポワロはカトリック信者で、信仰心もかなり篤い。『オリエント急行の殺人』ではそれがはっきりと出ている。というか、ポワロの信仰心が爆発する。

もちろんここで言う『ポワロ』とはデヴィッド・スーシェ版。スーシェの『オリエント急行』は本当に素晴らしいドラマだと思う。いかんせんミステリーだから結末は書けないんだけれど、「キリスト教(この場合はカトリック)の考えがどういうものか」ということがよく分かる作品でもある。

原作にはない描写だから、これは女房を質に入れてでも観るべきドラマだ。いや、本当に質に入れちまったら困るんだけど。