SEOのせいで、古参の作家の発言力が弱くなっているかもしれない件
作家の井沢元彦氏の新刊が、ちょっとした話題になっている。
内容というよりも、そのタイトルのお陰で。
確かに、これはちょっとアレだ。
このタイトルをありのままに受け止めるなら、伊達政宗がそんな早く天下を取れるわけがないと思う。関ケ原当時の伊達は、上杉と佐竹と最上に囲まれていた。まずはそいつらをどうにかしないといけないわけで、それだけで数年はかかるはずだ。
ただ、そのあたりは井沢氏も分かっていると思う。だからタイトルだけで書籍を判断するわけにはいかない。
それに、このタイトル自体は井沢氏の考えたものではないと思う。
どうもこれ、いかにも最近の新書という感じのタイトルで、考えたのは宝島社の若い編集部員じゃないかというのが澤田の推測だ。だってさぁ…このタイトル、『もしドラ』の何十番煎じじゃん…。
でも、こんな感じのタイトルが10年来の流行(陳腐化しかけてるけど)になってるのは事実。
で、これは井沢氏が若い編集部員に逆らうことができなくなってるんじゃないかと澤田は邪推しているわけだ。
「先生、このタイトルのほうがネットでバズりやすいし、そもそも今の人はスマホでAmazon利用してますから、最初から話の結論を持っていくほうがいいんですよ」
そう言われて井沢氏が頷いてしまった可能性がある。
見方を変えれば、それだけ紙の本が売れなくなってきているのかもしれない。
井沢氏のように、澤田が生まれる前から物書きやってる人にとって今の時代は下手すりゃ地獄だろう。
昔と違って、SEOというものを考慮しなければならない。
その視点から見れば、『もし関ケ原の~』というタイトルは『逆説の日本史』とか『日本史の叛逆者』よりも優れている。特に、井沢作品に触れたことのない若い読者を開拓していくなら尚更だ。
しかもそれは、本の内容を最初から総括したものでなければならない。『日本史の叛逆者』なんてタイトルだと、その内容が推測しづらい。スマホを使ってAmazonで検索している人々は、内容の想像できない本はスルーしてしまう。
端的に言うと、昔のやり方で本は売れなくなったということだ。
少なくともSEOを理解していないと、古参の作家と言えど編集部内での発言力は弱くなる。正直、これは当然の現象だと澤田は思う。
古参だろうと新人だろうと、この世界の基本ルールは「サバイバル」だ。