澤田の見た自爆テロ
スリランカの連続テロは、日本人も犠牲になった。
シリアやアフガン、イラクならともかく、スリランカは日本人観光客も多い国。そんなスリランカでまさかあんなテロが……と思った人もいると思うけど、インド以東のアジア各国はいつテロが起こっても不思議じゃないという意識でいたほうが安全だ。
別に恐怖を煽ってるわけじゃない。
澤田も3年前、インドネシアのジャカルタでテロに遭遇した。現場のすぐ近くの下宿にいたから、友達の一報ですぐに現場に駆け付けた。もちろん、一眼レフカメラは忘れない。
現場は政府の省庁や外資企業のオフィスが集合している地域で、澤田はこのあたりを毎日散歩していた。この日はたまたま寝過ごしたから、殺されずに済んだというわけだ。
路上に死体が3人分転がっていて、そのうちの2人が自爆実行犯、もう1人が何の罪もない若者だった。
そういえば、この日は知り合いの日本人駐在員とグラップリングの練習をする約束だった。地元選手のフランシーノ・ティルタのジムに一緒に行こうという話だった。もちろん、テロのおかげでそれどころじゃなくなっちまったけれど。
この日から、ジャカルタ市内の鉄道駅やショッピングモールの警備が厳しくなった。
ジャカルタ・コタ駅に行くと、自動小銃を構えた軍人が立っている。ショッピングモールも、出入り口の金属探知機を必ず稼働させるようになった。大きなバックパックを背負って外出すると、ところどころで警戒される。
それ以前のジャカルタは、本当にのんびりしていた。
あの頃はスマホのSIMカードも屋台でバラ売りされていたし、外国人がグラップリングの大会に飛び入り参加して賞金を荒稼ぎすることも可能だった。ショッピングモールの金属探知機は、あってないようなもの。いろいろなところでいろいろな融通が利いていたと思う。
それが、あのテロから一気に変わったというのは事実だ。