「お前が犯人じゃないという証拠を出せ!」と言い出す奴ら
事件に全く関係のない人が、ある日突然ネット上で犯人扱いされる。
もちろん、その人は身に覚えがないから弁明する。その時に必ず出現するのが、
「お前が犯人じゃないという証拠を出せ!」
ということを言い出す奴。いい大人がこんなことを平然と言ってるんだから、ネットはやっぱ怖い。
ちょっと考えれば小学生でも分かることなんだけど、「犯人じゃない証拠」なんてのは絶対に出せない。
近代司法は「犯人である証拠」を巡る論争で、それ以上のものはない。「犯人じゃない証拠」を基準にする裁判は、それこそ中世ヨーロッパの魔女狩りや異端尋問と同じだ。どんな人間でも「魔女」に仕立て上げることができる。
その人が「魔女」ではないということが判明した後も、
「疑われるほうが悪い。普段からの素行が悪いから、こういう時に疑われるんじゃないか?」
と、馬鹿な言い訳をする。ここまで来ると、完全に自己保身だ。
己はマジョリティーの側から一歩も出ないまま、マイノリティーに属する人やスケープゴートにされた人に対して石を投げる。やってて気分がいいだろう。日頃の鬱憤を晴らせる絶好の機会だ。
そして次に起こるのは、石を投げる者同士の不毛な争い。
「お前はあの時根拠のないデマを流した。謝罪しろ!」
という具合に、デマ拡散に手を貸した者同士が揉め始める。
最後まで他人に石を投げ続けたい欲求が、人間を狂わせていく。
強盗バラバを釈放して代わりにイエスを磔にした2000年前の大衆と、ネットのデマに躍らされる現代人。そこに進化は殆どない。