たまには澤田もエンターテイナー

ノンフィクションライター澤田が、このブログではエンターテイナーになった気でいろいろ振る舞います。

「マスコミが伝えない真実」を信じている人がいる限り、トレンドブログはなくならない

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煽り運転騒動の時、ネット民から「ガラケー女」認定されてしまった女性がいた。

この女性は、Instagramで暴行犯にフォローされていたというだけで共犯扱いされた。

デマの拡散に大きな影響を与えたのは、トレンドブログだ。

www.news-postseven.com

クラウド求人サイトでこのテのトレンドブログ執筆者を募集する、ということは確かにある。1記事1000円でも割がいいほうで、まあ大抵は1記事500円とか200円とかじゃないだろうか。もちろん、そんな程度の報酬じゃ澤田はやらないけどね。

それで……何でこんなトレンドブログに需要があるのかというと、つまるところ「大手マスコミが報道しない真実を知りたい」という人がこの世には大勢いるからだ。

新聞は「紙の枚数」、テレビのニュース番組やワイドショーには「尺」というものがあって、この世で発生している全ての出来事を完璧に報じ切ることはまずできない。

ところが、そこに世間一般との感覚のズレも当然出てくる。「どうしてこんな大事なことを報道しないんだ!」ということが、しばしば起こるわけだ。

昔だったらそのモヤモヤは噛み潰すしかなかったんだけれど、今はSNSというものがある。「こんな大事なことを、新聞社は全然伝えていない!」という意見表明ができる。

端的に言えば、トレンドブログはそれをカバーしている。しかも、その話題がトレンドになってからほんの数時間、場合によっては30分くらいで記事がアップされる。

一番ありがちなのは、

「あの事件の被疑者の実名が報道されていない!」

という大衆の欲求に沿うような、

「○○事件の犯人の実名は? 実は××社の社員だった?(※記事内に実名表記有)」

という感じのタイトルを関した記事。冒頭の「ガラケー女」の濡れ衣を着せられた女性も、こんな感じで悪者にされた。

つまりこのテのデマは、

「何で被疑者の実名をマスコミは報じないんだ! 何か裏があるんじゃないか? 犯人を社会的に抹殺しろ! そうしなければ不公平だ!」

という日頃溜まった閉塞感から来る「誰かを叩きたい欲求」を、見事に刺激しているわけだ。

 

いつも言うことだけれど、常に勝者はGoogleだ。

澤田を含めたWebライターは、そのおこぼれをもらっているに過ぎない。

記事内広告を流している側から見れば、その記事の内容が真実かそうでないかは大した問題じゃない。結果的にその広告の商品に人が寄ってくればいいんだから。

それじゃあ、そんな仕組みのWebに秩序をもたらそう……という動きは確かにある。

ところが、GoogleにしろFacebookにしろTwitterにしろ、それを設計した側の人間は基本的にアダム・スミスの弟子のような人々だ。

多少のフェイクニュースや誹謗中傷が配信されていたとしても、全世界のネットユーザーの完全自由を保証すれば「神の見えざる手」で世界がいい方向に動くと確信している。

悪い情報は、それを国が規制せずとも消費者自身が駆逐してくれるだろうという前提だ。とくにTwitterには、その発想が設計として露骨に出ている。Twitterがつい最近まで誹謗中傷対策に消極的だった理由は、それしかないと澤田は思っている。

 

いずれにせよ、トレンドブログというものは国が規制でもしない限りはなくならない。

ただし、Googleも対策を施すようにはなってきている。メディアと個人ブログの記事をしっかり区別し、検索順位でメディア記事>ブログ記事という感じの整理をやるようになった。

それと、トレンドブログの危険性もだんだんと認識されるようになった。少しずつではあるけれど、「マスコミが伝えない真実」と銘打たれている記事ははっきり言ってゴシップみたいなもんだという意識が浸透している。

あと、デマ情報をリツイートしただけでも訴えられるということが広く知られるようになり、そのあたりに気を遣う人も増えた。そういう意味で、Webの世界は着実に進歩している。