たまには澤田もエンターテイナー

ノンフィクションライター澤田が、このブログではエンターテイナーになった気でいろいろ振る舞います。

渋谷のコギャルが支えたモバイル技術

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昔、藤井みほな先生が『GALS!』という漫画を連載していて、アニメにもなった。

 モバイルテクノロジー分野のネタで記事を書いてる物書きは、この漫画を読み返してみよう。

GALS!はミレニアム前後の時代で、その頃は日本のモバイルテクノロジーの絶頂期だった。

女性高生が携帯電話を所有していて、彼女たちを満足させるための内蔵機能やプラットフォームも用意されていた。

どの端末にもカメラがあるのが当たり前になってきた頃だし、画面も白黒からカラーになったし、音楽も聴けるようになったし、果てはフィットネストラッカーまで実装するようになった。日本のモバイルテクノロジーの独自発展は、その後魔法のiらんどが巻き起こした「ケータイ小説」ブームまで続く。

ちなみに、GALS!連載時はこんな製品も開発された。

k-tai.watch.impress.co.jp

ところが、2019年の今では日本のモバイル分野は全く振るわない状況だ。

ブログにも書いたけど、G20のテクノロジー展示ブースにモバイル関連のものは殆ど出てこなかった。いや、皆無と言ってもいい。

ブースに出てきたのは高齢者介護に向けたものが妙に多くて、逆に若い女の子が使うことを想定した製品やプラットフォームはひとつもなかった。

「あの頃は良かった」と言いたいわけじゃない。つまり、この分野で日本企業は中国や韓国にタメを張ることすらできなくなったということだ。

今の日本の女子高生は、中国メイトゥの美顔アプリでキャッキャワイワイしている。

この状況の深刻さを、ミレニアムの頃には既に中年だった世代の人間は意識した方がいい。

やっぱりG20のテクノロジーブースは「スマホを使って何かするもの」が皆無だった件

昨日、澤田はこういうことを書いた。

ロボットとかiPS細胞とかロケットとか、まあいろいろあったんだけど、よく見たら「スマホアプリを使って何かする製品」が皆無だったんだよなぁ。

ただ、この記事を配信した後にやっぱり気になってもう一度会場を見渡してみた。

スマホに検出結果を反映させる製品」や「スマホで製品本体を操作できる製品」は出展されていた。たとえばこれは、介護対象者の尿意を感知するデバイス。尿意が迫ったら、それを家族のスマホに通知する。

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確かに、これはこれで凄い。

けれどこの製品は、「スマホアプリを使って何かするもの」ではないんだよ。いやまあ、単に言い方の問題なのかもしれないけれど。

スマホを使ってラジコンのように操作できる乗り物」もあったんだけど、2019年のテクノロジージャーナリストが求めているのはそういうものじゃない。「Google Mapでピックアップ地点を指定したら、自動運転でそこまで来てくれる乗り物」を求めている。

それにはビッグデータをうまいこと管理する大胆かつ緻密なスキルが必要だし、道交法との折り合いを考えてくれる法律の専門家も確保しなきゃならない。

で、そういうことを瞬時にできる体制(というより環境)が、日系企業にはないんじゃないかと澤田は邪推している。

G20のテクノロジーブースは「日系テクノロジー企業の弱点」がモロ見えだった

G20の会場でこの記事を書いてます。

3年前の伊勢志摩サミットもそうだったんだけど、国際メディアセンターはある種の見本市みたいになっていて、テクノロジー分野の企業ブースもある。

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ロボットとかiPS細胞とかロケットとか、まあいろいろあったんだけど、よく見たら「スマホアプリを使って何かする製品」が皆無だったんだよなぁ。

要するに、一般人がスマホを使ってあれこれするサービスに関しては日本は完全に出遅れてる、というより苦手分野だっつーのは理解できた。これが中国だったら、「新しい形のライドシェア」とかがブース出展するんじゃねぇか?

主催者(日本政府)は「メイド・イン・ジャパンの技術の凄さ」を披露するつもりでこういうブースを出したんだと思うけれど、澤田から見れば「便利なアプリを創出できない」日系企業の弱い部分がまざまざと浮き出ている。

それに思い返してみたら、10年前までモバイルテクノロジー分野は日本のお家芸だったじゃないか。2000年代前半から半ばまでは、ノキアが企画中だったサービスの大半が日本で既に実現しているような状態だった。それが何で「苦手分野」になっちまったんだ。

「日本の底力」を宣伝する前に、まずは「10年間の衰退」について考えた方がいい。

 

一方で、料理は良かった。

G20のメディアセンターでは記者向けの料理が無料提供されてるんだけど、西日本の物産を使ったメニューがバイキング形式で並ぶ。それに関しては、日刊SPAで記事にした。

nikkan-spa.jp

日本産の清酒やワインのコーナーもある。この辺に関して文句を言う記者は、あまりいないんじゃないか。

そういえば東南アジアでも、現地進出の日系企業の中で特に好調なのは飲食分野だ。10年前まではあれだけ得意だったモバイル分野は少しずつ衰退しているけれど、飲食分野は絶好調。その様子はG20の企業ブースでも窺い知ることができた。

そういう意味で、今回の大阪G20は「日本を現状を表した国際イベント」だと思う。

人生初の講座を終えて感じたこと

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澤田の人生で初めて、他人様に教える側に回ったのは貴重な経験だった。

その中で課題も見えてきた。

まず、今回のテーマは「QRコード決済という概念」についてだったんだけど、その講座に集まったのは全員スマホビギナー。まあ、この辺は想定していたことだった。

で、スマホの使い方をはっきり把握していない人は、自分がGoogleアカウントを作っているかどうかも意識していない場合が殆どだということが分かった。Android端末でアプリをダウンロードしているんだからGoogleアカウントはあるはずなんだけど、「それって何です?」と返されてしまう。

端的に言えば、スマホビギナーに対して「QRコード決済」はあまりに高い壁だった。「何か質問ありますか?」と聞いたら、全員無言だった。

恐らく、いや間違いなく、澤田と受講者の間にはいくつもの高い「概念の壁」がある。そんな状況でQRコード決済講座は、はっきり言ってレベルに合わない難易度設定だった。

まずは「GAFAの提供するアカウント認証サービス」という壁から乗り越えないといけない。

 

GAFAで己のアカウントを作るということは、個人情報をGAFAに預けるという意味で、しかもそれを各々のスマホに反映させるという意味だ。

今回の講座の受講者が特に注目してくれたのは、以下のくだりだ。

東西冷戦時代の工業製品は、誰が使っても同じ性能を発揮した。岸信介だろうが池田勇人だろうが佐藤栄作だろうが長嶋茂雄だろうが王貞治だろうが力道山だろうがジャイアント馬場だろうが、正しい使い方をすればトランジスタラジオは等しく稼働する。

ところが、スマホは違う。個々の性質や思惑がはっきりと反映されてしまう。そしてそれに応じて、発揮されるパフォーマンスに差が出てくる。

結局、このあたりをもっと掘り下げて分かりやすく解説しないと、QRコード決済以前の問題になってくるわけだ。

ただし、「概念の壁を乗り越えないと使い方を教えても飲み込んでくれない」という澤田のある種の確信は、決して間違ってないと思う。

静岡市に住んでる皆様、QRコード決済講座はいかがでしょう

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しつこくPRさせてもらいます。どうせ自分のブログなんだから。

6月15日午後1時から、澤田真一のQRコード決済講座を行います。

これはPayPayやLINE Payの使い方ではなく、QRコード決済の概念について話す予定です。静岡市でもQRコード決済対応店が増えていますが、「なぜQRコード決済なのか」「何がどう便利なのか」「消費者、事業者にとってのQRコード決済導入のメリット&デメリット」に関して重点的に解説する予定です。

ASEAN諸国でキャッシュレス決済サービスが普及していることも話します。

予習として、まずは以下の動画を視聴していただければ幸いです。

youtu.be

予約はこのフォームから

個人経営の店舗を経営していて、なおかつQRコード決済導入を検討している方はぜひご参加ください。定員は30人ですが、それを超過しても何とか会場に入れるよう工夫する予定です。

予め問い合わせがあれば、個別の相談も受け付けます。

QRコード決済講座まで、あと1週間

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澤田の人生初の講座が近づいてます。

本当は今年の3月にやるはずだったんだけど、何だかんだでここまでずれ込んだ。ただ、地方都市にとっては今がジャストタイミングなのかもしれない。ちょうど「Pay決済」が話題のワードにもなっているし、静岡市も地元展開のスーパーマーケットとか個人経営の居酒屋とかでPayPayを採用するところが増えた。

それに加えて、PayPayが少額決済向けのキャンペーンを打ち出した。去年の100億円キャンペーンは話題作りとしては100点満点だったけれど、あれが中小の個人事業店舗に影響を与えたかというとお世辞にもそう言えなかった。

今は違う。流れは完全に変わった。

去年、こういう記事を澤田は書いたんだけど、幸いなことに見込みが当たった。

sawada.hateblo.jp

PayPayは、どこかであと2、3度は大きなキャンペーンを打ち出す必要があると思う。

できれば今度は、少額の買い物を想定したキャンペーンがいいかもしれない。この前の「100億円」は、大型の買い物を想定したものだった。そうじゃなくて、カフェでコーヒーを1杯飲む程度の利用にピッタリなキャンペーンをやるべきだ。

この「カフェでコーヒーを1杯飲む程度」のキャンペーンが、ついに始まる。

www.appbank.net

あと、全国の夏祭りや花火大会も見逃せない。

PayPayに対応した屋台が、確実に増えているからだ。

もしかしたら、夏祭りの屋台を狙ったキャンペーンもやるかもしれない。

となると、QRコード決済普及の山場は7~8月ということになる。

「町の電器店」が日本を衰退させた

かなり煽ってる感じのタイトルかもしれないけれど、どの町にも1件はある「近所の電器店」が現代日本の技術革新の足を引っ張ってるんじゃないかと澤田は考えている。

せっかく買った家電製品に何か不具合があった場合、メーカーや大型家電量販店に持っていくよりも、近所の電器店に持っていくほうが早くて楽だ。

電器店のおっちゃんは、電話一本で家まで来てくれる。家電製品の使い方も丁寧に教えてくれる。50年代にいわゆる「三種の神器(テレビ、冷蔵庫、洗濯機)」が出てきた時、それを一般家庭に普及させたのは他でもない、個人経営の「町の電器店」だった。

その当時だって、

「洗濯機なんかなくったって、ウチは今まで洗濯板でやって来た。これからも洗濯機は必要ないし、大体そんな機械置いたって使い方なんか分からない!」

と言い張っていた人は多かったはずだ。

スマホやPCなんかなくったって、ウチは今まで固定電話機と鉛筆のノートでやって来た。これからもスマホは必要ないし、大体そんな機械置いたって使い方なんか分からない!」

だから、最先端機器の使い方を事細かに教えてやる業者が必要になって来る。三種の神器の場合、その役割を製造メーカーと密接につながっている電器店が果たした。地元密着型の営業スタイルが奏功した結果と言うべきだ。

それじゃあ、スマホやPCで同じことができないのか?

結論から言うと、できない。

簡単な話で、東西冷戦時代の工業製品は誰がどう扱っても同質のパフォーマンスを発揮するものだった。トランジスタラジオがいい例だ。扱う人間が岸信介だろうと佐藤栄作だろうと長嶋茂雄だろうとジャイアント馬場だろうと、正しい操作手順さえ覚えれば製品の間に性能差は一切出ない。

ところが、スマホは違う。使う人間によってパフォーマンスに大きな差が出る。だからまずは「持ち主がスマホで何をしたいのか」というところから始めなくちゃいけないけれど、スマホの使い方を知らない人は「これから自分がスマホで何をするのか」ということすら予測できない。

にもかかわらず、スマホやPCを販売してる家電量販店はかつての「町の電器店」と同じ感覚でモノを売っている。するとどうなるかというと、メモリ4GBのCeleronノートPCに「ユーザーサポート料」という名目で10万円近い値札をつけるわけだ。Twitterのアカウントを作るのに5000円とかね。

スマホについて全く知らない人は、「元が安いスマホでも手厚いサポートがあれば適正価格じゃないか」と思ってしまう。これはもう、知識と経験があるかないかで巨大な「概念の壁」ができているとしか言えない。もっと言うと、ユーザーサポートとやらにカネを出し続けている人はこの先成長する可能性が低い。数年後にまた型落ちのPCや数世代前のiPhoneを買わされるだけだ。

使う者によって大きなパフォーマンス差が生じ、しかも新陳代謝の早い通信機器の分野では「町の電器店」の出る幕はない。

そしてインダストリー4.0の世界は、各個人を常時オンライン接続する通信機器の存在を前提にしている。

情報格差はさらに広がっていく。